日本ではかつて、飢饉に備えて「かてもの」と呼ばれる救荒作物が栽培されていた。彼岸花の根っこを晒して解毒に使用したり、クズ、カタクリの根からデンプンを抽出したりする。
この「かてもの」の一種として、長崎県・対馬に「せんだんご」と呼ばれるさつまいもの発酵食品がある。何度も浸水と乾燥を繰り返しデンプンを取る、かなり労力のかかる食品だ。南米のジャガイモ発酵食「チューニョ」やアイヌの「ポッチェイモ」の文化にも通じるものがある。
大変な労力を要して作られる保存食だが、飢饉のなくなった今でも、せんだんごは対馬で受け継がれている。果たしてどういうわけなのか。対馬でお年寄りの訪問看護をしながら暮らしの知恵の聞き書きを行う、楠瀬裕子さんより寄稿いただいた。