世界の発酵文化は、各地域の気候と作物の起源、民俗文化が複雑に絡み合わさってできている。
キリスト教で聖なる食べ物とされる「ぶどう酒とパン」はどちらも酵母を使った発酵食品だが、日本の神棚に供えられるお神酒や、ブータン人が山の神に捧げるアラ、バンチャン(vol1参照)、韓国のマッコリ、中国の紹興酒や腐乳、台湾原住民のどぶろくなど、アジアの発酵文化ではカビの一種である麹を使うのが特徴だ。カビは湿気を好む。降水量が多く、高温多湿なモンスーン・アジア地域の気候が、麹カビが好む生息環境にぴったりなのだ。
糖分をアルコールに変えてくれる酵母菌は、糖分がないとうまく能力を発揮できない。もともと糖度の高いぶどうに比べ、アジアの民が発酵に使う米や穀物は糖度が低い。そこで登場するのが麹だ。麹は、米や麦、豆などの穀物に麹菌を繁殖…