東西文化の交差点に見るスパイスと生薬
筆者が初めて海外一人旅をしたのは21歳の時。旅の始まりはシルクロードだった。当時大学で覚えたての中国語を使ってみたくて、一人上海行きの船に乗り込んだ。その船の名は「新鑑真号」。
鑑真は奈良にある律宗の総本山・唐招提寺を開いた僧で、仏教の他、建築技術や芸術文化、生薬や薬の使い方も日本に伝えた。医術に明るく、光明皇后の病気を治した功で大僧正の位を授かっている。鑑真は来日時の海難で失明してしまっていたが、あらゆる薬を嗅覚で正確に鑑別できたという。
正倉院の「種々薬帳」には、当時中国からもたらされた約60種類の生薬のリストが記されており、うち約40種類が正倉院に現存する。丁子(クローブ)、シナモン(肉桂)、コショウなどが当時、生薬として伝わり、1250年の時を経て今もカレーに欠…